Tokyo-NoKoGen iGEM 2015
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“シロアリ”という言葉にどんなイメージを持っていますか?この小さな昆虫、実は想像できないほどの大食いです。しかし人間の生活に多大な損害を与えるシロアリを、人体に安全かつ完璧に駆除する方法はありません。NoKoGen2015ではこの問題を解決するためのシロアリ駆除システム“ExTermite Coli”を開発しました。
シロアリは木造建築の多い日本において古くから害虫とされており、現在も多くの住宅がその被害を被っています。しかしシロアリの駆除に用いられている殺虫剤の多くは人体やペットなどの哺乳類にも有害であるのに加え、即効性があるためにシロアリの巣全体へ十分に行き届かないといった問題点があります。そこで、NoKoGen2015では哺乳類に無害かつシロアリの巣全体へ行き届く、シロアリの新規駆除システムExTermite Coliを提案しました。
ExTermite Coliでは殺虫剤を生産できる大腸菌とシロアリ擬卵を組み合わせることで、巣にいるシロアリを含めた駆除を目指しました。
哺乳類に安全な殺虫剤を生産する大腸菌
我々は3,3’-ジケトトレハロース(以下3,3’-dkT)という化合物1が昆虫のエネルギーを取り出す機構に関連する酵素を阻害することに着目しました。シロアリ含め昆虫はトレハロースという化合物の形でエネルギーを貯蔵しており2、必要な時はこれを分解しエネルギーにして活動しています。3,3’-dkTはこのトレハロース分解酵素を阻害するため、3,3’-dkTを摂取したシロアリは蓄えたエネルギーの取り出せなくなり衰弱死する事が期待されます。一方で哺乳類はこの代謝経路を持たないため、3,3’-dkTによる悪影響がないと考えられます。我々は3,3’-dkTを哺乳類に安全な殺虫剤と考え、これをシロアリ体内で生産できる大腸菌の開発を行いました。
大腸菌の自動自殺システム
我々の大腸菌はシロアリ以外の昆虫にも影響を与える可能性があります。
従ってこのシロアリ駆除システムが他昆虫への与える影響を抑える必要があります。
我々はシロアリが光の当たらない地中で活動することに着目し、
光に応答して自動的に細胞死を誘導する機構を開発し大腸菌に付与しました。
光によって大腸菌は自動で死ぬため、光の当たる地上で活動する他昆虫へ
の影響を抑えられることを目指しました。
シロアリの習性を利用した擬卵による大腸菌デリバリーシステム
巣にいるシロアリへ効果を及ぼすには、大腸菌をシロアリの巣へ運び、かつ巣のシロアリ体内へ導入しなければなりません。そこで我々はシロアリが自分たちの卵と認識したものを巣へ運び、舐めて世話をする習性に着目しました。シロアリが自身の卵をその直径と卵認識フェロモンによって認識することや、それを利用してシロアリの巣へ殺虫剤を運ばせる試みが報告されています3。そこで我々はシロアリが自分たちの卵だと誤認識するような擬卵を作製し大腸菌と組み合わせました。これにより大腸菌を含んだ擬卵をシロアリ自身に巣に持ち帰えらせ、舐めさせることで、巣全体のシロアリを駆除できることが期待出来きます。
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Sode, K., Akaike, E., Sugiura, H., & Tsugawa, W., (2001) Enzymatic synthesis of a novel trehalose derivative, 3,3’-diketotrehalose, and its potential application as the trehalase enzyme inhibitor, FEBS Letters, 489, 42-45.
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Becker, A., Schlöder, P., Steele, J, E., & Wegender, G., (1996) The regulation of trehalose metabolism in insects, Experientia, 52, 433-439
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Matsuura, K., Yashiro, T., Shimizu, K., Tatsumi, S., & Tamura, T. (2009). Cuckoo fungus mimics termite eggs by producing the cellulose-digesting enzyme β-glucosidase. Current Biology, 19(1), 30-36.
ExTermite Coliの詳細はNoKoGen2015 Wikiをご覧下さい。