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Tokyo-NoKoGen iGEM 2013

”Twinkle coli とは”

微生物をロボットとみなして、センサやアクチュエータ、制御システムを搭載して作成する「微生物ロボット」は、マイクロロボットと言えます。マイクロロボットが実現できれば、体内に入れて病変を治したり薬を運んだりといった画期的な治療や、環境中の微量な金属を効率的に回収したり、環境汚染物質を探索し分解し無毒化するといった環境分野での活躍が期待できます。

 さて、ロボットを作る上で、頭脳となるコンピュータで処理装置として働くCPUの性能が重要です。CPUの性能を決めるのは動作周波数で、これが速いほどCPUの処理速度が上がりコンピュータの性能は高くなります。動作周波数は1秒間に刻むクロックの回数を示すためクロック周波数とも呼ばれ、例えば、1秒間に100回のクロックを刻む場合は100Hzと表されます。このクロックは発振子という電子部品から生成されます。

 クロックを生む発振子は生物にも存在します。シアノバクテリアなどが持つ概日リズムを司る時計遺伝子などがそれに当たります。しかし、これらの発振子は、タンパク質の状態変化のゆったりとした繰り返し、またはタンパク質による遺伝子発現の制御(転写→翻訳→転写抑制の3ステップ)を介したもので、周波数は数十分から数時間です。

 高性能の微生物ロボットの実現のためには高性能なCPUが必要であり、発振子の周波数を高くする必要があります。しかし、タンパク質を介した発振子では反応が遅かったり、制御の仕組みが複雑であったりすることから高い周波数を生むことは困難です。そこで私たちは全く新しいアプローチで微生物ロボット用発振子の開発を試みました。

 そして、この生物ロボット用発振子を応用して蛍のように光る大腸菌がTwinkle coliです。

”RNAオシレータ"

 RNAは生物内でDNAからの転写によって生成されます。RNAのうち、触媒活性を持つRNAはリボザイムと呼ばれ、それ自身が基質切断のような酵素活性を持ちます。つまり、RNAはタンパク質よりもワンステップ早く作られ、リボザイムを用いれば酵素活性も利用できる分子と言えます。

我々はこのようなRNAの性質に注目し、RNAにより構成される発振子、RNAオシレータを開発しました。

発振の仕組みとしてはリングオシレータの方式を取りました。これは、3つの要素が互いの出力で互いの出力を抑制する関係にあることで、発振状態を生む仕組みです。

RNAオシレータでは3つのRNA分子(RNAモジュール)を用意し、このRNAモジュールはリボザイムであり自己切断活性を持っています。

一つのRNAモジュールから切り出されたRNAが別のRNAモジュールの切断活性を抑えるようにすることで、リングオシレータの形態をとっています。

1つのRNAに注目すると、時間ごとにRNAの切り出される量が周期的に変化しています。このようにして周期的な波を生みます。

RNAオシレータにより生成された波を検出する方法として、リボレギュレータとRNAスキャフォールドを用いました。リボレギュレータはRNAがアクチュエータとして働き目印となる蛍光タンパク質の発現を促す。一方、RNAスキャフォールドはタンパク質の足場(スキャフォールド)として働き、2つに別れたタンパク質の会合を促します。

また、RNAオシレータを起動させるトリガーとして光を選び、光センシングシステムを用いました。

 これらを組み合わせることで、光によって起動し、周波数を生成し、生成された波に応じて蛍光タンパク質の発現量が変化する、言わばホタルのように点滅するTwinkle. coliを、RNAオシレータのプラットフォームとして構築しました。

参考文献

1) Elowitz MB and Leibler S. A Synthetic Oscillatory Network of Transcriptional Regulators Nature. 2000 20;403(6767):335-8.

Twincle. coliの詳細はNoKoGen2013 Wikiをご覧下さい。

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